いつもお世話になっております! 六日町店のサービスマンWです。

2025年もお世話になりました。来たる新年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

の、前に・・・

今月はちょっと重症患車さんが多くて、納期に時間を要しておりご不便をおかけしております。今回はその中の一台をオーナー様の許可をいただいて掲載いたします。

2013年式eKカスタムTグレードです。Tの名が示す通りターボ車です。

「アイドリングの調子が悪い」とのご用命にて入庫しましたが、・・・

3B20エンジンの音は毎日のように聞いてますが、音が明らかにガラガラと異常かつ大きい、そもそもエンジンのかかりも悪い、構内を移動するだけでも力感が薄い。明らかにヤバすぎるのでお客様と相談の上、緊急入院となりました。

タイミングチェーンが伸びてますね・・・

エンジンの圧縮はまだ悪くないです。まだ取り返しのつかなくなる一歩手前で踏みとどまっています。

お客様に概算のご予算を提示し、了解をいただきました。この診断とオペは私も初めてですが・・・

本来の作業手順的には、エンジンを吊っておいてこのスキマから頑張るらしいですが・・・もうエンジンを下ろそう。下ろした方が早いわ。

よっこいしょっと。

ではここからバラしていきます。

まずヘッドカバーを外したところです。オイル注入口の穴から覗いてみてはいましたが、チェーンの張りがたるんたるんに弱い・・・

エンジンオイルのスラッジも各所にこびりついています。

タイミングチェーンカバーを外したところです。

エンジンオイルの焼けた汚れが下に行くほど凄い、これは長期にわたってエンジンオイルの交換がなされなかった痕跡?

えっと、スプロケットの合いマークは整備解説書によると・・・

めっちゃズレてますやん。ていうか手でエンジンを回してて油断するとスプロケットとチェーンがズレる。

これ、もっとひどいとエンジン内部で部品同士が干渉してしまい、冒頭チラッと書いた圧縮が落ちるということに繋がってしまいます。

オートテンショナー(チェーンに自動で張りを与える部品)が伸びきっていて、なおかつコレでもまだ張りが足りないという。

如何に電子制御が進歩したイマドキのエンジンといえど、エンジンの基礎からズレてしまっているので電子制御でどうこうできる範疇を大きく超えてしまっているというワケです。

ココで蘊蓄の時間:タイミングチェーンは何故伸びるのか?

まずエンジンオイルの働きとしまして、昔私が教わった整備士のテキストから

潤滑・冷却・洗浄・密封

潤滑:金属と金属の当たり面を潤滑する
冷却:燃焼や摩擦による熱を冷却する
洗浄:エンジン内部の金属粉やカーボンを洗浄する
密封:金属と金属の隙間を密封する

おおざっぱにざっくり。

エンジンオイルが何故汚れていくのかといいますと、主に燃料と微量なオイルの燃焼によって生成されたカーボンや、金属と金属が擦れ合って出来た金属粉などを取り込んでいったり、熱による成分劣化などなどありますが、このうちカーボン成分ってかなりの硬度があり、これがチェーンのピンとコマの摺動面を磨り減らしていく、結果としてタイミングチェーンが全体的に伸びる・・・というワケです。

このあたりはホンダからも論文が出ているそうです。

エンジンにとって生命線とも言えるエンジンオイルが、長期にわたって交換されていないことで逆にエンジンを痛めつけてしまうんですね。相手がタイミングチェーンでなくとも、オイルの中に溜まりに溜まった汚れがピストンリングを固着させてしまい、走れば走るほどエンジンオイルを激しく消費していく例もあります。これが所謂オイル上がりというやつです。そのオイルが燃えたカーボンがこれまたエンジンを痛めつけてしまったり・・・

今回お客様のお車はターボ車ですから、エンジンオイルはもっと汚れやすいです。

メーカー規定のシビアコンディションに基づき、エンジンオイルの交換は5000kmに一回、オイルエレメントの交換はエンジンオイル交換2回につき1回、にてオススメしております。

イマドキのクルマってデカくて重くなりがちです。先進安全装備で装備が重く、衝突安全基準でボディの寸法も大きくなり、重く。

そしてエンジンのほうは排ガス規制や燃費の関係でますます条件が不利に。とにかく軽く回ることが求められるイマドキのエンジンだからこそ、エンジンオイルの重要性はますます高まっていくばかりであると言えるでしょう。にもかかわらず軽自動車の排気量は上限660ccですからね。デリカミニの場合ですと重量はデリカD:5の約1/2、排気量は約1/3(!)。こんなに不利な条件で頑張ってるんですよ軽自動車のエンジンは。

バイクのドライブチェーンもメンテナンスをサボってると伸びちゃいますよね。スズキのバイクで油冷エンジンってありますなぁ。

 

おっと脱線気味。

結果、

新品と比べてこれほど違ってました。並べてみて目を疑いました・・・

新品のチェーンや関連部品を交換し、張りと合いマークもバッチリ!

この後気持ちよく始動するようになり、走りもとても軽やかに気持ちよく蘇りました♪

このお客様のお車の場合、他店様にて中古車を購入されておりまして、そこから9ヶ月の故障発生でした。前オーナーさんのオイル管理があまりよろしくなかったのかなと思われます。その中古車販売店様では保証対応はちょっと・・・とのことでした。

三菱認定Ucarなら、販売前に我々が厳しく品質をチェックしており、プラス手厚い保証が付いております!(宣伝)

と、いうわけで

エンジンオイルの管理ってホントに大事だなぁと改めて思います。

たまにお客様から聞かれるのですが「このクルマそろそろ10万kmなのでタイミングベルトとか交換しなきゃ?」と。「このクルマはタイミングチェーンなので10万kmでの交換とかありませんよ~ でもオイル管理をしっかりしていないととても大変なことになりますが○○様なら大丈夫です、この調子で頑張りましょう♪」って会話に。

そのとても大変なことになってしまったのが今回の例です。どう大変なことになるのかって、会話ではなかなかお伝えしにくいところですが、この記事がご参考になればと思います。

今年ももう残り少なくなってまいりましたが、年末年始に遠出を計画されているお客様、オイル交換の時期は大丈夫でしょうか~?年内27日までの営業となっておりますので、ご用命の際はお申し付けください♪

 

それでは2025年もお世話になりました。
来たる新年もどうぞよろしくお願い申し上げます。